男子50km競歩・強さの秘密【東京五輪金メダル獲得の可能性】

東京オリンピックでの金メダルが期待される競技の1つとして競歩が注目を集めています。

世界陸上で男子50km競歩が銀メダル・銅メダル・5位入賞という歴史的な快挙を達成しました。

近年、競歩での日本選手の活躍が目立ちますが、日本の強さの秘密は何なのでしょうか?

興味深いのは、日本記録と世界との比較である。

世界記録 3時間32分33秒 ヨアン・ディニズ(フランス)
アジア記録 3時間36分06秒 虞朝鴻(中国)
日本記録 3時間40分12秒 山崎勇喜

世界記録と日本記録の差は、実に7分39秒もあります。

1kmあたり9秒以上の差をつけられている計算です。

アジア記録からでさえ、4分以上遅れている。

 

例えば、低迷して久しい男子マラソンでいえば、

世界記録 2時間2分57秒
日本記録 2時間6分16秒

その差は3分19秒

1kmあたり約4.7秒です。

 

記録的には世界との差はまだまだ大きいと思われる50km競歩がなぜ、世界陸上でWメダル、トリプル入賞の快挙を達成できたのか、調べてみました。

引用:www.jiji.com

データに基づいたペース設定

絶好調の世界記録保持者ヨアン・ディニズ(フランス)が序盤から抜け出すと、「記録が違いすぎる」と無理には追わず、2位グループの集団の中で自分の設定したペースを守ります。

ヨアン・ディニズは、後半になってもそのペースは衰えず、3時間33分12秒という圧倒的な大会新記録でぶっちぎりの優勝。

銀メダルの荒井の自己ベストが、3時間40分20秒なので、これは勝負にはなりません。

 

結果的には、序盤に飛び出したヨアン・ディニズを追わなかったのは正解だったといえます。

日本の3選手は、あらかじめ目標タイムを定めたうえで、集団のなかで戦うのではなく、自分のペースを追いながら、レース展開を考える作戦でした。

 

それぞれの目標タイムと、今回の記録は

荒井選手

自己ベスト 3時間40分20秒
目標タイム 3時間38分~40分
今回の記録 3時間41分17秒
結果 銀メダル

小林選手

自己ベスト 3時間42分08秒
目標タイム 3時間40~42分
今回の記録 3時間41分19秒
結果 銅メダル

丸尾選手

自己ベスト 3時間49分17秒
目標タイム 3時間45分
今回の記録 3時間43分3秒
結果 5位入賞

心拍数を普段からチェック

日本選手は、レースでの目標ペースを想定するときに、想定される心拍数も参考にして決めるのだそうです。

マラソン選手も同じですが、ロードレースの選手はみな腕時計をしてタイムを確認しながらレースをします。

日本選手は、練習の時から心拍計ウォッチを使用して、タイムとともに心拍数を計測してそのデータを蓄積しているのです。

 

レースでも、タイムとともに心拍数を確認しながらレースをするので、無理のないペースで最後まで崩れることは少ないそうです。

選手もコーチも、ペースメイクには自信を持ってレースに臨むことができるのです。

 

長期合宿の成果

強化選手は長期の合宿を経て、同じ場所で練習をしながら、食事も一緒にとるなど、個人競技でありながらチームとしての活動が多いことも日本の強みの一つです。

例えば選手同士でちょっとしたアドバイスをしあったり、コーチがかける言葉も、選手と指導者の共通理解ができている。

そして、これからの期待の若手が、すでに国際大会で活躍しているベテラン選手と同じトレーニングをすることで、『このトレーニングをこなしていけば、自分も国際大会でも通用する』という自信を持つことにつながります。

 

「このトレーニングで本当に世界で戦えるようになるのだろうか」という不安を持つことがないのです。

 

レース中のサポート

競歩はスピードだけでなく、「歩形」も重要で、世界陸上でも何人もの選手が失格処分となっています。

最悪一発レッドで失格まである競歩では、ペース配分、心拍数チェックとともに、歩形のチェックもスタッフの重要な役割です。

 

2kmの周回コースを25周した今大会では、随所に配置された日本スタッフが、ペース、タイム差、心拍数とともに、歩形が崩れていないかを確認しながら選手をサポートしていたのです。

 

東京オリンピック金メダルへの期待と課題

世界陸上ロンドンでの男子50km競歩は、過去のデータを積み上げてきたなかで、暑さ対策、調整なども非常にうまくいきました。

地元開催となる3年後の東京オリンピックでは金メダル、いや今回の結果を見ると、あの札幌オリンピック70mジャンプの再来、つまり金銀銅独占まで夢見てしまいます。

東京オリンピックの年、荒井選手は32歳、小林選手は27歳、丸尾選手は29歳。

脂ののったいい時期です。

もちろん、3年間で若手がどんどん伸びてくるでしょう。

 

さて、実際のところはどうなのでしょうか?

世界陸上でも、リオオリンピックの金メダリストであるトート(スロバキア)、銀メダリストのタレント(豪州)が揃って欠場していることを考えると、安易にメダル確実とは言えません。

 

ポイントはやはり暑さ対策でしょう。

真夏の東京で3時間半以上の長丁場ですので、正直言って選手の体調が心配になります。

今大会で日本以外の上位選手はすべてヨーロッパ選手でした。

フランス、ウクライナ、ハンガリー、ポーランド、アイルランド。。。

東京の暑さは間違いなくこたえるはずです。

 

そう考えると圧倒的な地の利があるのは間違いないところですので、この3年間でこの暑さの中でどんなペースが最も適していて、心拍数をどのくらいに設定するのか、そのデータ収集と対策が最も大事になると思われます。

 

世代交代

今まで競歩といえば、マイナー競技で日本のトップ選手でもその名を知る人が限られるような競技でした。

国際大会での活躍に刺激されて注目を集めるようになれば、荒井選手や小林選手がそうであったように、長距離から転向する選手も増えるでしょう。

いや、初めから世界のトップを狙える競歩を目指す若い選手も増えてくるはずです。

 

もしも、マラソンや駅伝のようにテレビ中継されるようになれば、4時間近くテレビに写され続ける競歩は、企業のコマーシャル効果も大きいので強化に乗り出す企業がもっと現れるかもしれません。

そうなれば好循環で、強化費用も潤沢になり、世代交代によって「競歩王国」を築くことも夢ではない。

 

「数年前には考えられないことが現実になってきて、今の時代に競歩をやれて幸せだなと思います」(荒井選手)

 

3年後の金メダルを、そして競歩王国を目指して、

頑張れニッポン!


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